-2025年5月14日
やはり、初っ端から吹いてしまいました。例の新刊本の「魏志倭人伝」における「(伊都国から)南へ水行20日」、「(投馬国から)ヤマタイ国へは水行10日、陸行1か月」という記録を引き合いに出して、「つまり南の方角にどんどん進んで行くと『ヤマタイ国に至る』というわけだ」と書かれている箇所です。水行、陸行について「どんどん行く」としか理解できないとは。
古代人の船旅や陸旅の、苦行のような困難さをわかっている人は、このようなことは決して書くはずがありません。今日のような豪華客船が客の排泄物を人知れず海に滝のように吐き出して進む時代とは異なり、劣悪な状態に置かれる古代の船客は、船着き場(津)に船が着くたびに下船して、水や食料を入手するなどしなければならないのです。そのため、直行=「どんどん行く」ことなどできるはずもなく、津々浦々を巡りつつ、下船乗船を繰り返すしかなかったのが実情です。これについては、レバノンのティルからスペインへの往復3年がかりの旅においては、行きに下船した地で麦の種子を撒き、帰りにそれが実ったのを刈り取って帰路の食料に当てたという記録もあるほどです(ヘロドトス)
陸行においても、今のような整備された道はなく、特に南九州のような地では、木やつる草の生い茂る道なき道をまるで獣のように、野宿しながら進むわけですから、それこそ野獣に食い殺されかねない日々を力を振り絞って乗り越えて行く苦行であって、直行などとはとんでもない話です。古代人の身になって考えれば、すぐに気づくことではありませんか。ある研究者が、実際に古代の条件で奄美山中を歩く実験をしたところ、1日7kmほどしか進めなかったということです。
また、卑弥呼の墓が「径百歩」(144m)と記されていることから、大きいと信じられているようですが、古代の「径」は円の直径ではなく縦の長さを指す語ですし、著者の陳寿も、ただ人の言うことを聞いて書くだけの人でしたから、本当のことかどうかもわからない。女王のイメージに酔って盛った表現をした可能性も考えられます。
円ではなく小振りな墓の可能性も否定できない。ともかく、縦が280mの箸墓の主とするには、144mでは勝負にならない。
それに、最新鋭の年輪年代法によって箸墓築造年次を測定したように修辞されているが、その新法を発見した教授自身が誠実に「測定の可能性」はあるが、今後精度を高めていく必要があると語られており、あの番組は何だったのか・・・実に不可思議です。また、もし番組で明示されていた250年が最新技術による年次であれば、それはC14法による測定結果とほぼ同じであるから、最新技術による必要もないか、あるいは何らかの不具合がそれ自身に内在する可能性もあると解するのが妥当と思われます。
纏向遺跡から、ベニハナやバジルの花粉が発見されたという紹介が参考になっただけに、「どんどん」行けなかったことが残念です。
2025 5/14
-2025年4月30日
いまだに、思い返すたびに涙がこぼれてきます。澄んだ瞳のリバティアイランド号。三冠牝馬。人間とは異なる、汚れのない生き物の壮絶な死・・・。生きていれば、史上最高の母馬となったであろうものを。なにしろ、その父は、早逝を惜しまれるあの天才馬・ドウラメンテ号でしたから。 ー合掌ー
2025 4/30
追記:過日、教育系メディアから取材の依頼がありましたが、現在クラスレッスンは行っておらず、ライフワークに全身全霊を傾けていますので、あしからず。
ー2025年3月31日
第一次産業は、国民生活の根幹中の根幹ですから、大切に、まず何よりもはじめに保護育成策がとられなければならない分野であるのは自明です。その彼らに悲鳴を上げさせるなどもってのほかと言わざるを得ません。そして、ついに彼らは民主主義国家の第一次産業の担い手としての自負のもとに声を上げました。我々を救えと。心底感動しました。また沿道の人々の暖かい拍手、声援を送っている姿からも、民主主義は静かに確実に根付いているのだと気付かされ、こみ上げてくるものがありました。これこそ特大のニュースです。今年の桜の下の光景を、私は忘れることはないでしょう。
2025 3/31