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2020年2月

〇「火焔の王」読者から寄せられたご質問 (2)  ※(1)は「インフォメーション」に掲載中。

 古墳(王陵)の内部調査が可能となれば、諸王の確定が進むのではないか、ということについて。

 現在封じられている古墳(王陵)の発掘調査が、古代史研究にある程度役に立つことは、疑いえない事実であり、考古学の成果は、古代史研究の大きな一助となるといえますが、古墳こそがすべてを語る確証物となりうるかという点は少々疑問です。なぜなら、人類が登場する以前の太古の地層などとは異なり、古墳(王陵)は人間が造ったものにすぎず、しかも政治、権力に強く関係する建造物ですから、虚偽の面、つまりダークな側面も合わせ持つのは当然と思われるからです。つまり、古墳は、美と戯れる芸術家や、真理、真実を尊ぶ研究者が造った類のものではなく、大小問わず存在していた権力者の鎮魂、賞賛、あるいは隠蔽、封殺などをも目的として造られた恣意性の極めて強い性格を必然的にもつものとして、冷静に、クリティカルに捉えられるべきものに他なりません。

 要するに、古墳(王陵)もまた、偽証することがあるという点を忘れてはならないということです。

 「70年研究したけれど、まだわからない。だから古墳は面白い」と、大塚初重氏(明治大学名誉教授)は記されていますが、その言葉は実に示唆的と思われます。

 歴史というものは、常に二度と触れることのできない事実という名の推定の世界以外の何ものでもない。そして、言うまでもなく、歴史学としての古代史研究には、緻密な考察と豊かな想像力、そして大胆で鋭い洞察力が欠かせないことも付け加えておきましょう。

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〇おそらく、後世の歴史には「人災」と記されるはずです。猛威を振るう新型コロナウィルス性肺炎に倒れた方々を悼むとともに、闘っている最中の方々の無事を心から祈りつつ、手洗いとマスクと自己免疫力にしか活路を見出せない多くの人々が、この現実にあきれつつも、怯えることなく、淡々と、あるいは力強く、乗り越えて行かれることを切に願ってやみません。

 生きて、お会いしましょう。 

                                                      2020  2/16