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2022年9月

  花もまた語る

 前代未聞ともいうべきでしょうか。庭のくちなしの花が、9月の半ばから、再び咲き始めました。まるで、6月末の炎熱によって、早々に花の命を断たれたことを、サラリと乗り越えるかのように。季節はずれの、しかも二度咲きというありえないこのくちなしの開花が、一方で、当然にも地球環境の大変動のレベルがさらに一歩深まったことを示唆するようでもありますが、もう一方で、「時を踏み越えよ。そのためにいったん時を巻き戻せ」といっているようにも思われます。「自分のような小さな花でさえできた。大丈夫」と。

 時を巻き戻すとは、振り返り総括せよ、という意味です。つまり、徹底的な総括の時代に突入するということです。それなしには、一歩も先に進めないということは、少しものを考えることのできる人なら誰でもわかることです。少なくとも忘れないということ。忘却は罪への加担に他なりません。あの「歴史は繰り返す」という諺も、単に現象の説明ということにとどまらず、忘却によって愚行を繰り返す人間の安直さをいましめる意味を秘めているものとも考えられます。倦むことのない、ひるむことのない徹底的な総括が求められているのは、まさに今、そして、これからです。楚々として、しかも強靭に、9月に狂い咲く、くちなしの花の言語なき「言葉」が、これであろうかと思われます。こういう意味で、花も また語るといえましょう。

                         2022     9/30