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2023年1月

                                    

 私には粋な友人がおり、毎年グレゴリウス暦で賀状が送られてきます。化石言葉でいえば、イカス(いかす)ギャルソン。サルトルの「存在と無」の講読の授業では、大テーブルに向かい合って腰かけていることもあり、そんな時、ふと顔を上げると、目を原書に落として一心不乱に読み込んでいるその風貌が一瞬ジャン・ポール・ベルモンドかと見まがうこともあり、少々ウフーンでした。                                                             

 哲学的な傾向はそれぞれで、しかもあまり議論したわけでもありませんが、フランス国費留学の帰りの折には、ムスタキの「永続革命」(一般には市販されていないはずです)のドーナツ盤をさりげない風情でホイと渡されて、知っていたのかと心が少し暖まった覚えがあります。「グレゴリウス暦」を目にするたびに、葉をすっかり落としたイチョウ並木の光景と共に、あの「ポール」の面影が絵のように蘇ってきます。

 私の友人たちは、数は少ないが、無限に豊かだと勝手に思えることが、そこはかとなく楽しく感じられます。

                                            2023  1/4